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運動感覚をとりもどす5 グレッグ

 

 グレッグさんは44歳の会社員で、何年も腰痛に苦しんでいます。カイロやマッサージでの改善は一時的で、エクササイズやヨガも試してみたがすっきりしなかったそうです。本人曰く、オレももう年だと思ったそうです。

 

 初めて会ったとき姿勢のくずれが目立ったので、これを修正するエクササイズを続けてもらったところ、気分はずいぶん改善したのですが、痛みは変わらず続いていました。

 

 そこでクレイグさんは二つのことを話しました。まず、これだけあちこちでいろいろ調べてあるし、自分から見てもグレッグさんの体に大きな問題がなくなっていること。そして頑固な腰痛のうらにはよく感情の問題が隠れていることです。

 

 これを聞いた瞬間、グレッグさんには思い当たる節があったようです。それから2週間後のセッション時、グレッグさんの痛みはほぼなくなっていました。心の中に怒りを抱えていることに正直に向き合ったことで、怒りを感じてもよいのだと初めて思えるようになったのです。

 

 怒りを感じる理由があることを理解できた。懸命に心の中で抑えようとしていた事実を認めただけで心が楽になり、からだの緊張が取れたのです。

 

 クレイグさんが書いている通り、怒りを感じることと、実際に怒ることは別です。グレッグさんも心と体の緊張が解けることで、むしろ穏やかな表情になったようでした。

 

 腰痛など慢性の痛みを扱うとき、心の問題を避けて通れないのは「椅子がこわい」でも書いた通りです。正しい指摘を聞いてもそれを正面から受け止められるか否かは、クライアント(患者さん)の心がその言葉に応えられる準備状態にあるかどうかで決まってきます。

 

 クレイグさんの指摘は、たまたまいいタイミングだったのでグレッグさんの心に届いたのでしょうか。それともエクササイズや指導で体がゆるんだことが、心を開くきっかけになったのでしょうか。