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「疲れ」を読み取る

 

 

 最近のスマートウォッチには心拍計が内蔵されていて、これを利用してからだの疲労度を知ることができます。心拍変動という仕組みを使って自律神経の働きを計るのですが、これがなかなか面白いのです。自分が感じている調子と機械が示す疲労度がだいたい同じの時もあれば、「あれ?」と思うくらいちがうこともあります。今回は自分の「疲労度を知る」がテーマです。

 

1 テッパンは「安静時心拍」

 

 からだの疲れを計るうえで、むかしから知られている方法です。朝まだおふとんから出る前に脈を計ります。10秒で打つ脈数を6倍すると安静時心拍になります。私の場合、調子のいいときは41回/分くらい、不調の時は50くらいまで上がるときがあります。いままでの経験上、調子の良しあしに一番合うのがこれです。

 

 また、有酸素運動の能力を見るのにもいいので、スポーツをしている方はときどき計ってみるといいですよ。運動を続けると少しづつ安静時心拍数が下がっていきます。心臓が丈夫になって、少ない回数で十分に血液を送り出せるので心拍数が下がるわけです。

 

 困るのは、寝ぼけているとなかなかじょうずに測れない点です。心拍数計測機能のついた腕時計も値段がこなれてきましたから、これをつければ、起き抜けに見るだけなのでたいへん便利です。トイレに行ったり、テレビを見るだけでも心拍数は上がるので注意してください。つぎにお話しするスマートウォッチならすべて問題解決です。

 

2 最新テクノロジーはすごい

 

 最近のスマートウォッチ(デジタル時計の進化版)は毎日の歩数を数えたり、行き先を教えてくれたりといろいろなことができるのですが、心拍数や血中酸素飽和度(体内の酸素量のめやす)まで計ってくれます。これを利用してからだの疲労度が測れるようになってきました。正確には脳の疲労度なのですが、いまでは脳の疲労が一番の問題だとされているのです。

 

 仕事が忙しかったり、運動をたくさんすると、数字がどんどん下がります。気持ちよくたっぷりの睡眠をとるとめきめきと疲労が取れてきます。睡眠が短かったり、浅かったりすると十分な回復ができません。食べ過ぎたり、お酒を飲むとあきらかに回復が遅くなるのにはびっくりしました。お風呂はいいのですが、長湯はあまりよくなさそうです。

 

 運動をすると確かに疲労度が強くなるのですが、運動を続けていくと疲労しにくくなってくるのもわかります。でも運動を多くした日にはたっぷりと睡眠をとる必要があることもわかりました。というようにとてもわかりやすく疲労度を教えてくれるので、いまでは毎日の相棒になっています。

 

3 手足は鍛錬ができる

 

 42キロを超えるマラソンがウルトラマラソンです。マラソンを走るだけでも四苦八苦なのに、それ以上、なかには何日もかけて何百キロも走る大会もあるくらいです。ウルトラに出れば、疲れがどういうものかよーくわかります。足を出そうと思っても前に出ません。手を振るのも嫌になってきます。疲れがたまってバランスが取れなくなり、かしいだまま走っている人を見かけました。

 

  ところが何とかなるのですね、これが。ゴール前の歓声が聞こえてくると、またみんな気力を振りしぼり、走り出します。ゴール!!これでやっと走らずに済む!というのがわたしの正直な感想でしたが、なかにはこれがやみつきになる人がいます。そういう方たちに話を伺うと、やっぱり慣れるのだそうです。筋肉、骨や関節もしだいに鍛えられ、はじめほどはつらくなくなるらしい。鉄人の誕生ですね。

 

 こういうときの疲労を末梢疲労といいます。末梢疲労は計測しにくいものの、経験すればいやでもわかります。対して中枢性疲労は脳の疲労です。さて、脳は鍛えられるのかな?

 

4 脳の鍛錬は?

 

 じつは持久系アスリート(マラソン選手など)のトレーニングでだいじなのはメンタルであることが最近の研究で分かっています。脳はからだが絶対無理しないようにブレーキをかけてきます。これが疲労の正体です。このブレーキを使うことで体が壊れないようにする。でもマラソンやウルトラのように極限を競うスポーツでは、ときにはブレーキをはずしてでもがんばる必要がある。いわばリミッターをはずす練習が脳の鍛錬であり、パフォーマンスの秘密なのです。

 

 こういう特殊な話ではなく、一般の方が脳を鍛えて疲労しにくくなることは可能なのでしょうか?調べた限りでは、まだはっきりとしたことはわかっていないようです。ただし、脳の仕組みを考えると疲労しにくくなるヒントはありそうです。ひとつひとつ順番にテキパキ片付けていくこと。同時にいくつもの用事を抱え込まず、やるときはやる、休むときは休む。たくさんのアプリを開いたままだとスマホの動きが悪くなるように、限られた案件を集中して取り組む。そしてたっぷりと寝ることです。