(ストライド=歩幅のこと。大きな歩幅で走る方法をストライド走法と呼ぶことがある。ピッチ走法は歩幅をあまり広げず、回転数でスピードを稼ぐ走法のこと。)
どこで着地するか
ミニマリズム(minimalism)とは、ランニングの考え方の一つ。シューズのクッションやサポートに頼らず、本来からだが持つメカニズムを利用して走ることをいう。一般に靴底のクッションが薄いシューズを履いて走るが、熱烈な信奉者は薄いゴム底のサンダルもしくは裸足で走る。通常の道路だけでなく、野山を裸足で走る人もいて、ランナーのみならずシューズメーカーも含めて一大センセーションを巻き起こした。
ミニマリズムの前足着地は過大評価されている。肝心なのは、上方向の動きではなく、横方向への動きなのだ。
エリートランナーの着地は、一般につま先から着地するフォアフット着地か足裏全体で着地するミッドフット着地だと言われています。いっぽう、一般のランナーはかかとから着地するかかと着地が多いので、早く走るためには、フォアフット・ミッドフットに変えなさい。こう言われる時代が続きました。
そのとおりにやってうまくいった人もいましたが、疲労骨折などの足の怪我をした人も少なからず出てきました。
バイオメカニクスの研究者、セラピストやドクターのなかでいろいろな研究や議論が起きていましたが、どうやら着地にこだわるのはあまり賢明でないという意見が増えてきました。どこで着地するかは、速く走れる理由でなく、結果に過ぎないのです。
実際のところ、前足着地とかかと着地の際、どちらのほうがかかとにかかる衝撃が多かったかを調べると、前足着地のほうが4、5倍も多いという研究があります。同じく、膝や股関節にかかる衝撃がかかと着地のほうが高いという意見もどうやら本当ではなさそうです。
どこで着地するかは問題ではありません。流れるような無理のないフォームで走れていれば、着地を気にする必要はありません。ヒールストライク(かかとでの着地)と言うとき、叩くという意味のストライクが問題なのです。地面を叩くのではなく、いかに前方向に進む力を地面に伝えるか、これを考えていきましょう。 3へ
(ベアフットシューズが流行ったころ、外来でもランナーの疲労骨折が流行りました。この経験からわたしも着地の話を聞くときはまゆにつばをつけて聞かなくちゃと考えていました。ベアフットシューズの代表ファイブフィンガーを販売したビブラム社は、アメリカで「こういう靴を履くことでケガをしにくくなる」という誤った主張で消費者を惑わしたということで訴訟を起こされたそうです。しかし、靴にすべての問題があるわけではありません。この本の核心部分はこれからです。)