去年の2月ころからはじまったコロナ流行は、私たちの生活にたくさんの影響を与えました。クリニックでは、その頃から腰の痛みを訴える方がとても増えています。世界中で同じようで、パンデミック(世界的疫病)のような腰痛=パンデミック・バックと呼ばれています。わかりやすく「コロナ腰」と言い換えてみました。
1 コロナ腰とは
コロナウイルスが原因で起きる腰痛という意味でなく、コロナウイルスが流行るようになってから爆発的に増えた腰痛のことを指します。世界中で外出制限やロックダウンが行われて、外遊び・スポーツ・旅行そのほか体を使うアクティビティを行うことができなくなました。感染予防のため在宅ワークに移行する人が増えましたが、通勤という「運動時間」が無くなり、一日中座り続けることも珍しくなくなりました。
体を動かすことで食べ物を手に入れ、疲れたら寝転がり、夜は寝る。これを毎日繰り返すことができるように人のからだは設計されています。じっとすわったまま動かないでいるのは本来の使い方ではないので、疲れのたまるところ=肩・腰などの筋肉がこってきて、ときには強い腰痛になるのです。
2 動かないから痛くなる
結婚式や法事に出ると妙に体がこるのを経験します。じっとするための筋肉に力を入れ続けなければならず、肩から腰にかけての筋肉がこってくるのです。
小さな子を見ているとよくわかるように、人間はもともとじっとしているのが苦手です。飛んだり跳ねたり走り回ったりは得意ですが、じっとすることに向いていません。ある種の動物、たとえばナマケモノやカメレオンはじっとするのが得意です。じっとすることで背景に溶け込んだり、気づかれずに獲物を待ち伏せることができるように体ができていますから、何時間もじっとしていて平気なのです。
人の場合、じっとしていると筋肉がこってきます。動くとコリが改善されますが、動くことが少ないとコリはどんどん強くなり、最後は固くなって血の巡りが滞ったり筋肉がけいれんしてきます。多くの場合、背中のまん中あたりで筋肉がけいれんし、けいれんした背筋が腰の筋肉が引っ張るために腰痛を自覚するのです。
3 セルフケア
・ちょこまか体を動かそう…座り仕事をしているとき、30分を目安として体を動かしましょう。1,2分でいいので、席を立ったり、背伸びやストレッチをしましょう。
・オフの日は運動しよう…手足を大きく動かし、汗をかくアクティビティならなんでもOKです。自転車や電車で出かけ、ショッピングで歩き回るのもありです。
・睡眠時間はぜったい確保!…睡眠5・6時間はちょっと短いかも。ためしに長めに寝てみたら、目覚めがすっきり、肩こり・腰痛も軽くなるかもしれません。
・血の巡りをよくしよう…お風呂にゆっくり入り、体を温めましょう。テニスボールなどでのセルフマッサージもおすすめです。
・体調をモニタリングしよう…安静時心拍数(起き抜けに測る)や起床時の血圧は体調の良い指標になります。最近のスマートウォッチ(アップルウォッチやガーミンなど)は、つけているだけで毎日の体調を教えてくれるのでおすすめです。
・ビタミンD補給を!…まずは日光を浴びてください。難しい人はサプリや薬もあり。腰痛の隠れた原因かもしれません。
4 ウィズコロナ時代の過ごし方
できればコロナをやっつけたいところですが、どうやら長いお付き合いになりそうです。でもワクチンがどんどん更新され、経口薬などの新治療も出てきますから、先行きは明るくなってくるでしょう。
感染予防に注意を払いつつもふつうに生活し、旅行やスポーツを楽しむ。友人との会食やときには宴会にも参加する。ただし必要な予防措置は怠らないし、どこまでがオーケーでどこからがだめなのかはわきまえておく。在宅ワークの人たちは新しい生活スタイルを構築して、健康を保つ。学校ではオンライン・通学を組み合わせ、子供たちの心身の向上を計っていく。夜の社交・音楽や演劇の公演・野外フェス・各種のスポーツ大会など、それぞれが工夫しながら運営を行っていく。まさかの時には行政や医療が手助けする。早くこんな生活ができるように、ひとりひとりができることをやっていきましょう。