(アーカイブ;2006年8月号より)
サッカーのワールドカップはおもしろかったですね。日本は残念でしたが、各国の一流選手のいっしょうけんめいなプレイを見ると、だれもが感動したはずです。サッカー選手の中心は20代で、30代になるとベテランと呼ばれます。40代で活躍する人はめったにいません。プロの世界はきびしく、最高のパフォーマンスを発揮できないかぎり現役で活躍することはできません。すると、どうしても20代が選手の中心になってしまうのでしょう。
そのいっぽう、サッカーの小型版といえるフットサルが流行していて、こちらは老若男女、各世代の人がプレーを楽しんでいます。うまくはないけれど、やるだけで楽しい。スポーツは見るだけでなくて、やるともっと楽しい、そういう経験をいちどしてみると、やみつきになってしまう人もいっぱいいるようです。
サッカーの試合は前半・後半あわせて1時間30分かかり、Jリーガーは一試合当たり10キロぐらい走っているそうです。いい運動になりますね。だいぶまえになりますが、子どもの集まりのつきあいでサッカーをしたら、帰りがけにはあしが上がらなくなって、歩くのにも苦労したことがあります。なさけないですね。
さて、外来で患者さんを診ていると、からだをさわることで、ふだんどれくらいからだを動かしているか、どういう生活をしているか、おおよそのことがわかります。そうすると、オヤジたちのからだはカタイ!弾力がナイ!おなじオヤジのひとりとして、ちょっとなさけない気持ちになってしまいます。
まあ、そうなってしまうのもわかるんです。学校を出たあとは、仕事仕事で追いまくられて、自分のからだにかまっているひまがない。家族ができたあとは子どもの学費や生活費をかせぐために、わき目もふらずはたらいて来た。たまの休日は、家族サービスをするだけでもせいいっぱい、このおれに何をせいと言うんじゃ!という気持ちも、痛いほどわかります。
そのわりに家族からは評価されていない。女房は文句たらたらで、太ってきたから、からだを動かせと言う。自分を見てからものをいえ!といいたい気持ちもわかります。
しかし、風呂場でじぶんのからだを見ると、(オレもこんなんじゃなかったのになあ)とも思います。学生時代はハラも引っ込んでいて、もっとかっこよかったのに。いや、これがオトコの貫禄なんだと強がってみても、自分より若いやつらがすっとスーツをきこなすのをみて、ちょっとうらやましく思ったりもします。
わかる、わかるんです。こころは少年のままなのに、いつのまにかからだはオヤジになってしまった人たちの心のさけびを。
だけども、ちょっと待ってほしい。もういちど、よく考えてほしいのです。さいごにたよれるのは、自分のからだなんだということを思い出してほしいのです。
こればかりは人のせいにはできません。仕事のせい、会社のせい、そのほか何かのせいにしても、何かが変わることはありません。20代は元気いっぱい、30代は20代までの貯金でがんばることができます。しかし、40代になったら、からだを充電しなおすことが必要です。また、それもできる年頃ではないでしょうか。仕事も一段落して、それなりに落ち着いてきます。経済的にも、若いころよりはゆとりがある人も多いでしょう。なにより、分別がついてきます。ほんとうにだいじなものと、そうでないものと、見わけることができます。
あなたにとって、あなたのからだはほんとうにだいじな物です。これまでもつきあってくれた、そしてこれからもつきあっていくかけがえのない器です。もういちど、この器をきれいにみがいて、ぴかぴかにしてみませんか。
そんなことができるのかって?わたしも現役進行中のオヤジなので、えらそうなことはいえませんが、こういう仕事をしていますから、ふつうの人よりはちょっとだけ知識があります。そして、さまざまな研究・情報から、「できますよ!」とお答えすることができます。
よく外来で耳にするのは、「むかしは運動が大好きでよくやっていた」「コレコレのスポーツでいいところまでいった」といったお話です。それはそれですばらしいことです。そういう経験があったことは、大きな財産です。
ですが、いまのあなたのからだにとっては、大きな意味はない。これは事実です。だいじなのは、今の時点で自分自身のからだをどのように手入れをしているかということです。運動、食事、ストレスマネジメント、自分のからだにどれくらい気をかけているかで、今のからだの状態が決まってきます。
がっかりすることはありません。逆に言えば、いくつであっても、思い立って、からだの手入れを始めればからだはよみがえってくるということです。そしてそのカギとなるのが、運動です。継続的な運動こそが、よみがえるきっかけを作ってくれるのです。
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