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疲労と元気のあいま

 

 

 最近疲れやすくなったと相談を受けることがあります。疲れやすくなったと感じるのは、年のせい、運動不足のせい、あるいはストレスのせい?なかなかわかりにくいですね。今回のお話です。

 

1 精神疲労と肉体疲労

 

 慶弔に関わらず何かの式典や行事に出るのは疲れますが、まったく行ったことがない場所や知らない人ばかりだったりするとさらに疲労感が強くなります。このように同じ場所で同じ空気を吸っていても緊張感が強ければ疲労しやすく、リラックスできれば疲れにくくなります。これは脳の疲れ=精神疲労で、脳の調子が良いかどうかで疲労にどれだけ耐えられるかが決まってきます。

 

 肉体疲労はわかりやすいです。ふだん以上にたくさん歩いたり、重いものをたくさん運んだ時の足のだるさやあちこちの筋肉痛を誰もが経験しています。筋肉内のエネルギーが枯渇したり、筋肉や腱のダメージが重なると、神経を伝って脳に連絡があり、(休んだほうがいいよ!)と言ってくるのです。しかし最後に判断するのはやっぱり脳なので、脳の調子がいまいちだと肉体疲労も強く感じることになるわけです。

 

2 年をとると疲れやすいのか

 

 となると、脳を元気に保つことが疲れを癒す早道です。長年患者さんたちの相談をうけていても、気持ちに張りがある人はやはり疲れにくいと思います。

 

 脳の機能自体は、からだのほかの部分と同じく年齢の影響を受けます。神経細胞の数が減り、一個一個の神経細胞も年をとります。だから若い人と全く同じというわけにはいかないでしょう。でも脳のすみずみまでしっかり働かせて手入れを行っていれば、脳の老化を防ぎ、活性化させることができます。筋肉をいっぱい使うと筋肉の血流量が増えるのと同じように、脳をいっぱい使えば脳の血流量が増え、脳細胞が元気になっていきます。

 

 ただし、一か所だけを集中して使いすぎると無理が来るのも筋肉と似ています。だから脳の幅広い機能をまんべんなく使うこと、そして疲労をためないことが大切です。

 

3 線維筋痛症と慢性疲労症候群

 

 この二つは今の医学ではまだよくわかっていない病気です。繊維筋痛症は体中の節々が痛くなるとともに、疲労感やさまざまなからだの不調が起きます。慢性疲労症候群では通常よりはるかに強い疲労感が続くほかにも体中の痛みなど多彩な不調がおきて、日常の生活をすることが困難になります。

 

 どちらも原因がよくわからず、手探りの治療が行われていますが、いろいろな調査が行われて運動をすることはある程度役に立つことがわかりました。きつすぎず、本人にできる範囲で、少しづつ行っていくことがだいじです。原因不明ながらストレスが少なからず関係している病気なので、やはり脳の疲労=精神疲労が発病の一因なのかもしれません。

 

 近年こういった一見謎のような病気が増えてきたことと、ストレス過多な現代生活には何らかの関係があるようです。ストレスは有り過ぎても無さ過ぎてもよくないので、そのバランスをどうやって保つか。ここに疲労とうまく付き合う秘訣があります。

 

4 疲労と回復のバランスを

 

 脳をまんべんなく使い、脳のすみずみまで新鮮な血液が行きわたり、老廃物が除かれ、栄養分が届く状態にする。使えば疲れは出てくるが、ため込まないようにする。一か所だけ集中して使うと壊れやすいので、同じことばかりするのは避ける。ちょっと疲れがたまったら、しっかりと休養を取る。こうすれば脳の健康が保たれ、やる気が失われず、毎日元気よく暮らすことができます。そのためにだいじなことを整理してみます。

 

・使う(ストレスのかかる)ところは幅広く・・・脳にもからだにも言えることです。一か所に集中して負担がかかることを避けましょう。いつも同じことをぐるぐる考え続けたり、すわりっぱなしで長時間仕事をするなどをさけ、間に休憩を入れ、気晴らしをしたり散歩をしましょう。

 

・使っていないのはどこか考える・・・体を動かしたり、人とおしゃべりするなど、脳の広い範囲を使う機会を作りましょう。前はしていたが最近はやらなくなったこと、前からやってみたいと思っていたことなど、新しい経験をとり入れるのもすばらしいです。

 

・睡眠時間や食事をたいせつに・・・起き抜けにすっきりとしていれば、多少眠りが浅くても目が途中で醒めてもオッケーです。食事は幅広くいろいろなものを食べましょう。

 

・ちょっとだけ無理を・・・人は楽に馴れるものです。ときどきいつもよりがんばってみてください。適度な疲労=適度なストレスは人生のスパイス、良いトレーニングになります。