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「ばんそうこう理論」とは

 

 

 おくすりや注射を使わなくても治ることがある。と言うと、「え?そんなことがあるの⁈」と驚かれることがあります。

 

 でもそんなに力技を使わなくても、からだにはもともと治る力が備わっています。いちばんわかりやすいのがひざこぞうなどをすりむいた時。ばんそうこうを貼って、傷を守ってあげるだけでどんどん治っていきます。ばんそうこうと同じように、体を守るしくみをじょうずに使えば、治る力を最大限に発揮できるのです。

 

1 からだじゅうに治る力が備わっている

 

 これを読んでいるみなさんは、ひょっとして病院で治療を受けないと病気やケガが悪くなってしまうと思っていませんか?たしかにそういうこともたまにはありますが、たいていの故障・不調はとくに治療をせずとも治っていきます。

 

 昨年の自分をふりかえってみましょう。頭痛、、胃のもたれ、肩こり、湿疹、鼻水、打ち身そのほかいろいろあったはずですが、それなりに良くなっていませんか。かんぺきでなくても、からだはなんとかやりくりしてくれるのです。まったくなにもなかった人でも、体の中では小さな故障が絶えず起きていて、小さな修理屋さん(白血球やせんい芽細胞など)が故障を直す仕事をしてくれます。わりに大きな故障があるばあい、からだのコントロールセンター(脳)に連絡があって、(しばらく脂っこいものをさけて胃の負担を減らしておこう⇒胃のもたれ感発信!)とか(骨にかかる負担を減らして早く治るようにしよう⇒関節痛の出力アップ!)のように症状を自覚するのです。

 

 こういうからだを守る・修復するしくみがうまく働いていれば、たいていのことはなんとかなるものです。ところがなんとかなるはずなのにうまくいかないとき、くすりやお医者さんに出番がまわってくるのです。

 

2 治る力を阻害するもの

 

 擦り傷の治り方で説明しますが、基本的に体のどの場所でも理屈は同じです。

 

 ひざに擦り傷を作ったとき、はじめに白血球が傷口にやってきて、入り込んできた細菌をやっつけます。つぎにリンパ液が沁み出して、死んだ細菌や壊れた皮膚組織を洗い流します。そのあと、せんい芽細胞が傷口をつないで皮膚細胞が傷のまわりから伸びてきて傷をふさいでいきます。よくできていますね。

 

 小さな細胞たちのはたらきをじゃましなければ、けがは最短で治ります。傷をこすらないようにやわらかいガーゼや包帯を当てる。激しい動きをさけて傷を刺激しないようにする。細胞たちが元気に働けるように、たんぱく質やビタミンが豊富な食事をとる。同じく休息をじゅうぶんに取って、修理の時間をたっぷり作ってあげる。これをわかりやすくたとえたのが「ばんそうこう理論」です。そして理論の真逆をやれば、傷のなおりがどんどん遅くなっていきます。

 

3 治る力を発揮するには

 

 上記に加え、運動器(骨・関節・筋肉)の場合、症状を生じる原因となった物理的な刺激をさけることが必要になります。

 

  • 痛みが出にくい動き・姿勢がある・・・たとえば腰部脊柱管狭窄症では腰をそり気味で歩いたり、長時間座りっぱなしでいると発症しやすくなります。上肢痛の場合、ねこぜ+くびがそり気味で症状が悪化する人が多いです。痛みが出にくい姿勢や動作を習慣にするだけで治るスピードがぐっと速まります。「ばんそうこう理論」でも大切な部分。クリニックで指導していますが、くらしの中でどれくらい気を付けてもらえるかがポイントです。
  • 体幹をきたえたり、全身のストレッチをするのはいいことです。きれいな身のこなし=故障をしにくい・回復しやすい動きと考えてください。
  • 歩き方もだいじです。足のうらをじょうずに使い、なめらかに足を運べば下半身にかかる衝撃が軽くなり、ひざや足腰の痛みの回復に有利です。
  •  ほんとうの急性期(1週間)を過ぎたら、適度の運動はむしろ修復を促進しますから、痛み=安静ではありません。トライアンドエラーで試してみてください。

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