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リハビリ できること・できないこと

 

 

 クリニックのホームページにも載せていますが、「リハビリをしてほしい」と相談を受けてもお受けできないことがあります。健康保険の仕組み、適応の有無、設備・人員の問題やリハビリそのものの限界など理由はさまざまですが、お役に立てないと判断したら正直に伝えています。でもどうしてなのかわかりづらいですよね。今回のお話です。

 

1 リハビリって?

 

 一言で言うと「元気になる手助けをする」ということです。うちのクリニックでは、ストレッチ・マッサージ、かんたんな体操や筋トレの指導、姿勢や歩き方のチェックなどがメインとなっていますが、元気にするきっかけになるならほんとうは何でもいいのです。病院によっては電気や牽引器などの物理療法や、PT(理学療法士)さんの運動療法が中心のところもあるでしょう。

 

 ただ世過ぎをするからには、お上の声を聴かなければなりません。医療に関する法律・規則を守り、指導も受けています。私たちの場合、筋肉や関節を中心とした手技療法に重きを置いているので、形の上では「消炎鎮痛処置」(医療費明細書の項目)をしていることになります。できることはしているつもりですが、公定治療費が安価な分①短い時間でも効果が出るように細かく分けて治療②患者さんができることはしてもらうためにストレッチやマッサージの指導をする、といった工夫をしています。

 

2 リハビリの得意分野

 

・ かたいものをやわらかく、縮まったものは伸ばす・・・手技療法(マッサージ・ストレッチをふくむ)でできることです。細かい説明は省きますが、これでかなりのことができます。やわらかくてしなやかなからだは健康の要諦と言えるでしょう。良くなったら、自分でストレッチに取り組みましょう。

 

・弱ったものを強く・・・筋トレや体操です。ただし、教えることはできても、やるかやらないかは患者さんしだいで、指導力が問われます。とくにご高齢の方では苦労するところです。リハビリはやったらやっただけ結果が出てきます。努力が実を結ぶ分野。

 

・カンを取り戻す・・・姿勢・歩行・動作指導、およびその反復練習など。中枢神経系に良い動きができるように刺激を与えます。ここはもう少し時間がかけられたらいいのに…と思っています。

 

・発想の転換・・・押してもだめならひいてみる。こうしなきゃと思っていることをほんとうにそうなの?と考えてみる。がんばっていたのを肩の力を抜いてみる。この手がダメならあの手を使ってみる。やわらかい発想でつらい時期を乗り越えると意外と元気になるものです。

 

・できること、できないことを明らかにする・・・根性!努力!ですべてが解決するわけではありません。故障の具合、年齢、収入や住環境など、条件に合わせてできることを探します。あきらめるのではなく、一歩でも幸せに近づく道を探す。むずかしいけれどこれがリハビリの本道です。

 

3 困る相談とは

 

 これはちょっと⁈と思う相談を挙げてみます。

 

・疲れたので、もんでほしい・・・健康保険で禁じられています。自費の治療院に行ってください。

 

・希望の治療をしてほしい・・・診断上ベストの選択をします。医学的にむりな(有効でない)治療だと判断すれば、そう伝えます。

 

・マヒを治してほしい、むかしの状態に戻してほしい・・・気持ちはわかるのですが、やはりできないことはそう伝えるしかありません。ただし、いままで見落としていた点を見つけて症状を軽くする、動きやすくすることはできるかもしれません。

 

・くすりやマッサージで歩けるようになりたい・・・自ら汗をかくことは、リハビリで欠かせない部分です。筋力をつける、体力をつけるのは絶対にくすりやマッサージではできません。が、意外と多い相談です。

 

4 柔軟に粘り強く

 

 大学にいたころ、わたしは脊髄損傷の治療の研究をしていました。脳やせき髄の中枢神経系は一度傷つくと戻らないと言われていましたが、それを何とかできないかと考えていました。でも現実には治らない患者さんを多く見送るうちに(もっと何かできないのかな)と考えるようになり、リハビリの世界に目を向けるようになりました。当時高名だったドクターが「リハビリはネバー・ギブ・アップ!です」と言ったのに感動し、紆余曲折を経て今に至りました。

 

 小さいクリニックですが、現在の仕事は気に入っています。医者としての戦闘力はおそらく何倍も高くなっているはずです。毎日の外来で見つかる小さな課題を、これからも粘り強く探求していくつもりです。