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関節を元気にしよう!!

 

 

 20年ほど前、はじめてマラソンを走った時のことです。帰りがけ、膝が痛くて駅の階段が上がれず苦労しました。1週間は横断歩道をわたりきれず、車にクラクションを鳴らされました。その後走り慣れてくると痛みは軽くなり、しだいに痛みを意識せずに走れるようになってきました。ところが⁈ 今回のお話です。

 

1 むかしとった杵柄(きねずか)はありません

 

 数年前に右足の骨折をしてからすべてが変わりました。細かい話は省きますが、アキレス腱の故障⇒骨折⇒手術をくぐりぬけた数年間で右脚の筋力がガタ落ちになりました。歩くのはOKでも、まともに走れません。感覚でいうと、マラソンを始める前、運動不足で体調を崩したころより悪くなった気がしました。

 

 「ゼツボー!」と一瞬思いましたが、すごろくで振り出しに戻ったのと同じ、またやるしかないと思いました。それからまた数年がたち、なんとか格好がついてきました。年を取った分スピードは出ませんが、これからも楽しんで走っていきたいと考えています。

 

 むかしスポーツをしていて、久しぶりに同じことをやろうとすると、気持ちは同じでもからだが全くついていかない。みんなはじめはそうなのですよ。でも気を取り直して続けていけば、またちょっとずつ上手になっていくのです。

 

2 軟骨のせいばかりにしないで

 

 軟骨がすり減ったから、ひざ(股関節そのほか)が痛いのだと考えていませんか?そう書いてある本や、お医者さんの説明があったかもしれません。医学生のころ、軟骨についてイの一番に学んだのは「軟骨には神経が存在しない」ことでした。神経が通っていないところは痛みを感じません。だから、お医者さんたちも(軟骨が痛みの直接の原因でない)ことは知っているのですが、いまでも関節痛の原因をクリアに説明できていないので、「軟骨がすり減っている」で話を終わりにしがちなのです。

 

 そこで関節に関係がありそうなことをぜんぶ調べていくのです。ひざ一つとっても、軟骨以外に骨、筋肉、じん帯、血管、神経そのほか細かな組織が縦横無尽につながっていて、ひざから離れたところまでたどって調べることが必要です。そして離れたところに原因が見つかることがしばしばあります。

 

 マラソン練習中の関節の痛みは大半が筋肉性でした。骨やじん帯の痛みもありました。神経痛もたっぷり経験しましたが、いまでもたまにぶり返します。痛みとの付き合い方をお話ししましょう。

 

3 痛みとつきあう

 

 痛み=絶対悪ではありません。温感・冷感・触感などと同じようにからだに必要な情報です。だから痛みと相談しながら体を動かしましょう。動き始めは痛いけれど、だんだん軽くなるようだったらとりあえず動いていいでしょう。反対に動けば動くほど痛みが強くなるようだったら、運動を休止するのが安全です。

 

 経過を見るのも大事です。週~月単位で痛みが軽くなっているのなら、とりあえず運動を続けてみてください。一瞬顔をしかめるような痛みがあっても、そのあと痛みが消えているときは大丈夫なことがほとんどです。うずくような痛みが長く続いたり、夜間睡眠を妨げるような痛みが出るときは運動を休止し、お医者さんに相談してみてください。

 

 筋肉が弱ってくると痛みが出やすくなります。運動不足の人は少しづつ運動量を増やしていくといいでしょう。急に運動量を増やすと、あちこちの故障を招きがちです。

 

4 関節を元気にするひけつ

 

・軟骨はざぶとん・・・お尻の下にざぶとんを敷くと楽になるように、骨にかかる衝撃を減らしてくれるのが軟骨です。軟骨を長持ちさせるには①適度な有酸素運動と休養のめりはりをつける②ミネラル・タンパク質に富んだ食事③長く座り続けず(背骨の軟骨=椎間板に良くない)こまめに動いてください。

 

・骨も重要・・・意外と骨の痛みが関節痛の原因だったりします。ビタミンD不足に注意!

 

・筋肉はばね・・・ 縄跳びのようなはずむ動きを練習してください。関節にかかる負担をやわらげます。

 

・じん帯にスローな筋トレ・・・ゆっくりしたスクワットはひざのじん帯を強化します。回数よりも、ゆっくりやることが大切です。慣れたらウェイト(重し)を使って負荷をかけるといいでしょう。

 

・栄養食品について・・・コラーゲンはタンパク質の一種で、皮膚・骨・筋肉などからだのすべてを形づくるもとになっています。コラーゲンそのものを口から摂取しても、消化管内でアミノ酸に分解され、もとのコラーゲンがそのまま体に入るわけではありません。現状では割高な栄養食品だと思った方がいいでしょう。スーパーで売っているゼラチンはコラーゲンの一種です。ゼリーを作って食べるのもいいですが、軟骨・牛すじ・煮こごりなどコラーゲンを多く含む食事をとるのが賢い方法だといえます。コンドロイチン・グルコサミンサプリについての最近の研究では、効果が疑問視されているようです。