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腰痛は慢性になるのですか?

(アーカイブ;2005年9月号より)

 

 たしかに慢性の病気ってあります。高血圧だって、糖尿病だってそう。だったら、腰痛だって慢性でおかしくないでしょ?

 

 うん、そのとおり。といいたいけれど、ここのところをもうちょっと考えてみましょうか。

 

「わたし、中学校のころから腰痛があるんです。」

 

「なるほど、中学校のころから、ずうーっと腰痛があるんですね。」

 

「そうなんです。」

 

「中学校以来、1年間365日、ずっと腰痛があるわけなんですね?」

 

「いえ、良くなったり、悪くなったりなんですけど。仕事をはじめてから、だんだんとひどくなったみたいなんです。」

 

「最近ではいつごろからですか?」

 

「一月ぐらい前からです。じっとすわりつづけたり、朝起きたりしたときに痛むんです。」

 

※ かぜは誰でもひきます。年に何回かひく人も珍しくないでしょう。でも、「慢性のかぜ」とはいわないのに、腰痛が年に何回かあると、慢性の腰痛と思ってしまうことがあります。でもよく考えて。

 

「痛くなるとき、なにか理由があったんじゃないかな。つかれがたまってたり、からだを冷やしたりしてなかったかな。」

 

「中学校のとき、椎間板ヘルニアと診断されていて、それがときどき出るみたいなんです。」

 

※ むかしの診断は正しかったかもしれません。でも、今のあなたの腰痛が同じ理由でおきたのかはわかりません。からだはどんどん変わります。別の理由でおきたのかもしれないのです。

 

「でも、いままでは2,3日ぐらいで治ってたのに、今回はずいぶん長いので、来たんです。だんだんひどくなってきたのかもしれない。」

 

※ 長びく理由はいろいろです。なかには特殊な病気もあるけれど、たいていは運動不足やからだのかたさ、姿勢や身のこなしのくせが原因になっています。長びく=悪い病気と考えるのはまちがいです。

 

「痛みの程度が、いままでより強いので心配なんです。」

 

※ 同じく、痛みが強い=悪い病気はまちがいです。ぎっくり腰で歩けない、動けないという人の多くは、せぼねのまわりの筋肉の故障(それも一時的に)が理由になっています。反対に、軽い痛みであっても、むずかしい病気の場合もあって、痛みの程度で病気のよしあしを判断することはできません。発症のときの様子、痛みの性質(動くときに痛いのか、じっとしても痛いのかなど)、痛みを感じる場所などを細かく聞くことが、診断ではとでも大切です。

 

(からだをさわりながら)「このへんが痛いんです。」

 

※ どのへんが痛むのか、教えてもらうのはとてもだいじです。気をつけなければいけないのは、痛みを感じる場所と、ほんとうの故障の場所が、けっこう離れていることが多い、ということです。痛みを感じる場所を教えてもらうことで、「じゃあ、このあたりにほんとうの理由があるのでは?」と判断できます。あてずっぽうでなく、筋肉や神経のしくみを理解することで判断します。自分の思っている場所とちがうところだからって、「先生、そこちがう!」なんていわないでね。

 

「前はコレコレの治療で良くなったんだけど、今回は治りが悪くて。」

 

※ はじめに言ったように、以前の腰痛と、いまの腰痛では理由がちがうかもしれません。同じ治療で良くなるとはかぎらないのです。また、腰痛の治療の考え方もどんどん変わってきています。医学の世界でも、十年ひとむかしは真実です。

 

「治してもらえますか?」

 

※ 腰痛が長びくのは、長びく理由があります。病院でできることと、患者さん自身ができることがあります。医者まかせでなく、いっしょに努力してみましょう。協力はおしみません。