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治療のヒケツ

 

 どんな治療や施術を行ってみても、必ずうまくいくとは限りません。いや、むしろうまくいかないほうが多いのかもしれません。そんな時、自分の視野を広げてみると、あ!こんなことができるんだと気がつくことがあります。

 

 大学病院に勤務しているときは脊椎疾患の治療が専門だったのですが、脊椎の外傷や腫瘍のためにからだにマヒを残す方が少なからずいました。若かったころは、「治す」という考え方からはなれられず、元気をなくして帰宅する患者さんを黙って見送ることしかできませんでした。

 

 研修先の病院でリハビリに出会ったときは、目の前が一気に広がる感じがしました。心理士さんの観察記録、看護婦さんからは日常の様子の報告、PT/OTさんたちの評価、ケースワーカーさんからは患者さんの家庭の様子や経済状況を聞き取ります。そしてどうすれば患者さんが元気になっていけるのかを話し合います。治すことはできないけれど、患者さんが立ち上がるきっかけを作ることはできる。病気だけを見つめず、患者さんのことを知る。そこに道があるかもしれない。多職種連携や、多角的な評価のし方を学びました。

 

 さて、以前私のクリニックで働いていたくつぬぎ手技治療院・沓脱君の文章で、とてもいいなと思うものがあったので転載します。手技療法の世界の話ですが、言っていることは同じです。必ずは治せないけれど、元気にしていくことはできる。これを読んであらためてそう思いました。

 

 

《機能障害の臨床について》

 

3日もたせたければ患部だけ診て、

 

3週間もたせたければバランスを整え、

 

3ヶ月もたせたければ身体を鍛え、

 

3年もたせたければ生活(身体の使い方・環境・栄養など)を工夫し、

 

30年もたせたければ意識を変える。

 

意識を変えるのが難しければ生活を工夫し、

 

それが難しければ身体を鍛え、

 

それが難しければバランス整え、

 

それが難しければ患部だけ診る。

 

人間は、老いて衰えやがて死んでいくというように、

 

留まることなく変化していく存在ならば、

 

機能障害に絶対的な原因や根本というものはなく、

 

より良い状態を長続きさせるための段階だけがある。

 

そのように捉えることで発想の自由がより広がり、

 

柔軟な対応をしやすくなるのではないか。

 

機能障害の臨床で大切なのは、いかに手詰まりを防ぐかということではないかと思います。

 

また、何かを変えるためにアプローチしていくときは、

 

クライアントとセラピスト、いずれも本人にとっていきなり難しいことをせず、

 

出来るところから段階的に進めていけばいい。

 

セラピストの身の丈に応じたことを、クライアントが適応的に過ごせる段階までやっていけばいい。

 

そして、いくつかの段階があるからこそ、他職種間の連携が望まれる。

 

機能障害の臨床を、私はそのように捉えています。

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