マスターズのための長距離トレーニング
ごくふつうの人たちが、用もないのに街中や公園を走り回る。いまでは当たり前の光景ですが、わたしが子供のころは、そんな人がいたら周りはビックリ、ヘタをするとお巡りさんに呼び止められてもおかしくないことでした。健康のため、体づくりのために走ることが一般的になったのは、ニュージーランドの有名なコーチ、アーサー・リディアードさんが世間に広めたからです。
この本はジャーナリストのギルモアさんとリディアードさんの共著で、中高年の人たちが、いままで運動したことがあろうがなかろうが、人生後半戦を元気に気持ち良く生き抜けるように身体作りをすることを勧める本です。
別にスポーツはなんだっていいのですが、いままで何にもしなかった人たちでも歩いたり走ったりはできる。だから、有酸素運動で手軽にできるランニングのABCを書いているわけです。
まずはちょっと覗いてみましょう。
「まず一人実例を挙げてみよう。27歳の男性で4人家族、二つの仕事を掛け持ちし、たまにラグビー、水泳やトラックでのランニングをやることがあった。まあまあ身体を動かしている方だから、同世代でも体力はある方だと思っていた。
あるとき陸上をまじめにやっている友人に走らないかと誘われた。距離は10キロだったが、心臓はばくばくし、息は上がり、足はガクガクしてゴールした。体力があるなんてよく言えたもんだ!
ここからさきがほかの人とちょっとちがうところだ。ああきつかった!で終わりにする代わりに、彼は『これはなんとかしないといかん!』と考えたんだ。これで27歳なんだから、もっと歳をとったら、いったいどうなってしまうんだろう?
今までのように、思いついたときにダッシュで走るだけじゃダメなんだ。かわりにゆっくりでもいいから長い時間を使って走ること、それを繰り返し続けていけば、どんなことにも対応できる基礎体力ができるのではないかと考えた。
しかし具体的なやり方はわからない。だからトライ・アンド・エラーを繰り返し、効果的なやり方を探っていったわけだ。」
皆さんもおわかりの通り、これはリディアードさん自身のことです。
「もう一人実例を紹介する。36歳の男性で、取材でわたし(リディアードさん)と会った際、他の人たちと一緒にスクアットをやることになった。そんなこと簡単さ!とトライしたがひざがこきっと折れ曲がり、後ろにひっくり返ったんだ。まわりは大笑い、わたしは顔をしかめつつ、それでも『あんただって、本気でやりさえすれば絶対マラソンを走れるぞ!!』と言ったんだ。」
これが共著者ギルモアさんとの出会いです。みんなに笑われたギルモアさんはネガティブに反応します。(そこまで言うならやってやる!オレはあんたの指示通り、一言一句言われた通りにやってやるぜ!だが見てみろ!いくらやったってできるやつとできないやつがいるのさ!誰でもやれば出来るだと?!そんなわけないことを証明してやるぜ!)
それから4ヶ月が過ぎたある日のことです。ギルモアさんは人生初のマラソンを完走したのです。
73歳となったギルモアさんは、今でも健康そのもの、ランニングを続けていました。そしてリディアードさんと一緒にこの本を書き上げたのです。
ではリディアードさんのトレーニングとはどんなものなのでしょうか?別稿のリディアードさんの伝記で明らかにしていきたいと思っています。