多彩なるボディワークの世界(3)

 

ロルフィング

 

 一般にロルフィングの名で知られているのがStructural Integrationです。創始者のアイダ・ロルフは女性の生化学者でしたが、からだの構造に重力が与える影響を考えて独特のボディワークを編み出しました。

 

 重心の崩れた状態でからだを使い続けると、どこかを動かしてバランスの補正をします。立っているときに頭が前に出ていれば、腰椎の前弯を強くしておなかを前に突き出してバランスを取ろうとします。この姿勢で立ち続けることが習慣になれば、筋肉などの軟部組織が本来よりも短縮したり逆に伸びた状態に変化していきます。

 

 はじめは単なる習慣であった姿勢も、長く続ければからだにそのくせが刻み込まれ、からだ中の力が抜けたとしてもくせがとれることはありません。患者さんの中には親子で受診される方がいますが、目鼻だち以上に立ち方や歩き方が似ていることがよくあります。また、顔が見えないくらい遠くにいても、知り合いなら歩き方のくせから誰それさんだと分かった経験が誰にもあると思います。学校の先生・警察官・銀行員のようになんとなく会っただけで職業がわかる人たちがいますが、表情・動き方や身振りに特徴があるのでしょう。このように多くの人たちには独特のからだのくせ(姿勢のパターン)がしみついているようです。

 

 ロルフィングでは、この姿勢のパターンを認識し、他力で矯正していきます。ほかのボディワークは、自分自身の意識を高めることでからだのくせを改善していきますが、ロルフィングは実際にセラピスト(ロルファーと呼ばれる)が相手のからだの短縮した組織(多くは筋)に手を当ててゆっくりと伸ばします。

 

 「ほんとうに伸びるの?」と思われた方、ほんとうに伸びるんですよ!もちろん際限なく伸びることはなく、からだの反応と適応の時間を経て、10回程度のセッションで全体のくせを取っていきます。きちんとしたストレッチなら直後に筋が伸びているのを物理的に計測できますが、ロルフィングの手技(と呼んでいいのかな)でもあきらかに筋が伸長されているのがわかります。理学療法の世界ではストレッチによる筋・筋膜の変化を電顕レベルで検証している報告もありますから興味のある方は参照してください。ロルフィングは痛い!というのが通説ですが、たしかに痛いです。でも伸長されると痛みが減ってきます。

 

 他力で行うということで治療に近いイメージがありますが、ロルフィングに限らずボディワークの世界では特定の治療効果をうたわないのが一般的です。からだをより良い状態で使えることにより、体調が良くなり結果的にどこかの痛みが改善するのはありえます。体調がいいので気分が明るくなり、より積極的に人生に立ち向かえるようになり、ときには人生が変わるような経験をするということもありうる話です。ですが、どこかが痛いからロルフィングをして欲しいというのはちがいます。ボディワークは謙虚であると同時に、夢は壮大なのです。