すべては股関節にあり
かぎはしなやかで強い体幹にある
(ミニマリスト=できるかぎり現代的な装備を使わず、本来人間が持っている能力を最大限発揮するランニングを追求する人を指す。一種の求道者であり、欧米で人気の「禅」の考え方にも通じるところがある。ここではクッション性の高い靴を履かず、サンダルもしくは裸足で走る人たちを指す。)
ミニマリストが言うように、私たち全員が、自分のランニングフォームを改善しなければならない。前回でお話したように、接地にこだわることには意味がない。なぜならどう接地するかはどんなフォームで走るかの結果で決まるのだから、接地を変えるのではなくフォームを変えなければならない。
ランニングで大事なのは良い姿勢と、股関節の伸展(=足が後ろまで十分に伸びること)の二つだけなのだ。
エリートランナーのフォーム・練習スタイルは様々だが、一つだけ共通点がある。それは股関節が柔軟で、足が後ろに十分に伸びて、最後まで地面を押し出す動きをしていることなのだ。
そして、これは子供のころにだれもが自然に走っていた時のフォーム、すなわち股関節が柔らかく、足で走るというよりも体幹から力が伝わっていく走り方、言い換えれば足ではなく体幹で走るフォームのことなのだ。
このフォームを実感するためには、骨盤の上に体がうまく乗っかっていて、からだは猫背にもならず反り返りもせず、うまくバランスが取れていることが大切である。そして走っている時には骨盤が腕時計の振り子ゼンマイのように動くこと、すなわち片足が前に進むごとに同じ側の骨盤も前に動き、足が後ろに伸びる時には同じ側の骨盤も後ろに動くことが大切だ。こうすればストライド=歩幅が広がり、伸びやかなフォームで走れるわけだ。
よくあるランニングの指導に、からだを前に傾けろというのがある。これをしようとして、たいていの人は背中を反らしすぎて骨盤が前に傾き、結果的に骨盤の理想的な振り子様の動きが妨げられていることが多い。こういうとき、あえて反るという意識を消して、からだをまっすぐに起こすことを考えたほうがうまくいく可能性が高い。
しかしながら、自分にとってベストの姿勢を見つけることは大事なことだが、その姿勢を必要なだけ保っていられるかどうか?は、もっと意識して考えなければいけない問題である。いくら正しいフォームだとわかっていても、それを自分が必要とする時間続けていけなければ、それは絵に描いたもちと同じだ。このことを次のセッションで考えてみよう。4へ