最良のストライド(7)

足の回転率を高める、利点と限界

 

 ピッチを上げる(足の回転率を高める)ことに利点があるとはよく聞く話だ。しかし最近の研究が示すところでは、理想のピッチはもっと個人的なもので、だれにでもベストのピッチがあるわけではない。

 

 しかしストライドを広げてスピードを速めようとすると、体の前で接地する傾向が強くなり、ランニングのバイオメカニクス上はからだに無理を強いることになる。

 

 そこでピッチを上げることに意識を向けさせると、結果的に無理にストライドを広げることが少なくなり、ランニングがよりスムーズになることが研究から明らかになっている。

 

 ランニングの世界では、1分間180回の歩数が、一種理想のピッチとして考えられてきた。これをこえることが効率の良いランニングの条件であり、このピッチを下回るとランニングの効率が悪くなるというのだ。

 

 だが現在の専門家の意見では、誰にでもあてはまる理想のピッチなどないという意見が優勢になってきた。たしかに超一流のランナーたちの世界では180という数字は意味を持つ。しかし一般の市民ランナーには180というピッチはハードルが高く、そもそもそこまでのスピードで走ってはいないのだ。

 

 一般のランナーの場合、1分で160のピッチが境界点と言える。これより上ならオーケー、それ以下の場合は走っているというより、一歩づつホップしていると考えたほうがいいかもしれない。

 

 またからだが接地している時間が十分短く、空中にとどまる時間が十分長い場合、あえてピッチを変える必要はないと専門家たちは考えている。ピッチが速いことは、必ずしもパフォーマンスが良いことにつながらない。いくらピッチが多くても、からだの後ろに足が伸びなければパフォーマンスは落ちる。無理に回転を上げると、でん筋よりもハムストリングを使いがちになり、からだを前に押し出すよりも上にジャンプしてしまう。

 

 ベテランランナーは、経験上自分にとってもっとも良いピッチを自然に選んで、最適な酸素消費量を選択しているのだ。あなたにとって最適なピッチは、一番快適に感じているときといえる。

 

 だから骨盤の動きをじゅうぶんに使えているとき、あなたのピッチはもっとも最適なところに収まるというわけだ。

 

 故障がある場合には、痛みの変化を観察すると良いだろう。たとえばピッチの上げ下げをしながら練習をして、痛みを軽く感じるのはどの辺りなのかを調べてみる。もっとも痛みの少ないピッチこそ、あなたの最適なピッチだとわかる。

 

 私たちの本当の目標は、ピッチを上げることではなく、最適なランニングメカニクスで走ることなのだ。腰高のフォームで、骨盤の動きを使い、足でからだを前へ押し、胸を開き、腕を後ろに振る。これができていれば、ピッチを気にすることはない。

 

 なんらかの理由でピッチを上げ下げする場合は5%の幅で行うこと。そして痛みを感じる部位があれば気にとめる。腿の付け根のうしろ、ハムストリングの付着部あたりに痛みが残るときは気をつけよう。これは走り方に問題があるサインだから。