40代で体調を崩してから運動をするようになって自分なりに体に気を使ってきましたが、やはり若い時とはちがうと感じることも多くなってきました。老化そのものは人生のプロセスで、だれにでも訪れます。体力は少しずつ落ちてきますが、毎日を楽しく充実して生きるにはどうしたらよいか考えてみました。
1 人生の後半戦
以前も書きましたが、長生きだけ取るなら今は最高の時代です。80代はおろか90代の方を診ることもまったくふつうになってきました。定年退職後の30-40年をできるかぎり元気に過ごしたいものです。内臓疾患の治療は相当に進歩し、がんも含めてかなり長生きできるようになってきました。元気な後半生のカギとなるのは認知症の有無と足腰のじょうぶさです。この二つがなんとか保てれば(多少の低下は否めませんが)それなりに幸せな毎日を過ごせるはずです。
2 健康よりウェルビーイング(生きている実感)
だれでも生まれてからこれまでにいろいろなケガや病気をしてきています。治ったとはいえその痕跡はからだのあちこちに残り、生まれたときのまっさらな体に戻っているわけではありません。体にのこる痕跡は人生のあかし・年輪みたいなものです。長く生きるほど痕跡は増えますから、だれもが「古傷だらけの人生」を送っていることになります。
病気やけがの影響が残ったとしても、それをくぐり抜けてきたことに誇りを持ちましょう。そして今できること、楽しめること、やりたいことをみつけてチャレンジしてみましょう。人生前半にはできなかったこと、興味がなかったことでも今なら楽しめるかもしれません。
健康診断の数字を無視するわけではありませんが、できるだけ家にこもらず、外に出かけて今の暮らしを楽しんでください。体を動かすことの効能は多くの慢性疾患・生活習慣病で確認されています。気になる方は、かかりつけのお医者さんにどの程度までの運動ならやって良いのか確認してください。
3 やっぱり運動がカギ
運動の効果でわかりやすいのは筋力の向上ですが、最近注目されているのは脳への効果です。運動をするときには手足から送られてくる情報を脳が解釈し、次に実際に手足を動かす指令を送ります。これを一瞬でからだのあらゆる部位で行うのですから、ちょっとしたコンピューターではとてもまねできないことを毎日脳はやっているのです。
だから体を動かすと脳が鍛えられます。人生の後半戦を有意義に過ごすには頭もからだも大切ですが、どちらも体を動かすことで鍛えられます。また体を動かすと筋肉からマイオカイン(ホルモンのなかま)が出て脳に働きかけ、気分や認知機能の改善に効果があることがわかっています。歩ける人は速く歩く・走る、家で体を動かすなら体操・トレーニングの中身を少しづつ強く・長くしていくのがコツです。
運動と名がつかなくてもからだを動かすことはすべて役に立ちます。毎日の買い物でちょっと足をのばす。ちょっと珍しいものを手に入れるため電車やバスで出かけてみる。家庭菜園を始める。草花を育ててみる。美術館や博物館に行ってみる。隣町を探検する。ボランティアや趣味のサークルに参加してみる。用事がなくてもとりあえず出かける。ゲーム好きならポケモンゴー(ゲームだけれどほんとうに歩き回ります)をやってみる。街や風景の写真を撮ったり、鳥の観察(バードウォッチング)など、自分がやりたい=からだを動かすことをきっと見つけられると思います。
4 続けるためのヒント
* 人と競わない・・・人生後半は競うのでなく助け合いです。
* むかしの自分と比べない・・・気持ちが若いのは良いことですが、どうしたって若いころよりは体力は落ちます。今の自分ががんばっているかがだいじ。
* 「運動」のはばを広げる・・・お気に入りの運動・スポーツ以外にも楽しいことがみつかるかも。
* まずやってみる・・・考えすぎないでやってみましょう。
* 楽しいかどうかで判断する・・・やって合わないと思ったらほかのチャレンジを!
* 太陽の光を浴びる・・・ビタミンDを作れば体が元気になります。
* ハードルを下げる・・・何も思いつかなかったらとりあえず出かけましょう。歩き回っているうちに頭が冴えて、自分なりにやりたいことが見つかるかもしれません(「ボケなき徘徊」と私は呼んでいます)。