· 

脳出血で入院しました

 

 

 7月末から脳出血で入院しました。突然の休院でみなさんにはたいへんご迷惑をおかけしました。幸いなことに現在でも歩けるし話せますから、ぼちぼちと外来を再開いたします。日付は決まり次第ホームページでお知らせする予定です。

 

1 発症後の経過

 

 8月号の最後に書いたように、自転車で遠くまで出かけたときに発症したようです。直後は何が起きたのか記憶があいまいで、少しづつ後から思い出せるようになりました。家族や医師仲間のご尽力でリハ病院に入院できて、おもに高次機能障害のリハビリを2か月ほど続けました。

 具体的には短期記憶に問題があったものの、ずいぶん良くなりました。まだ言いたい言葉が出にくいことがありますが、大筋では発症前に近づいてきました。みなさんの相談事にできるだけ対処できるよう、がんばっていくつもりです。

 

2 反省点

 

 自己管理が甘かった・・・血圧が油断すると高くなりがちで、塩分摂取量の管理が甘かったかもしれません。チーズを摂りすぎたのかも。

 

 別次元の高温対策が必要・・・外部環境の変化を軽く考えすぎ。4・5年前と比べて今どきの夏は別次元の暑さ対策が必要と思います。夏の真昼は運動を避けるべきでした。氷冷・水分摂取を徹底すること。夏場は激しい運動を避けなければなりません。

 

 年齢も考える・・・自分の体力・能力を冷静に判断する。からだを使い続けることは大切ですが、使い続けるにはどうすればいいか毎年新しく考え直す必要があります。

 

 患者さん、家族や職場の人たちに迷惑をかけた・・・自分一人のからだではないということを痛感しています。健康管理は個人の責任を越えています。

 

3 高次機能障害とは

 

 パッと目にはわからないが、話を続けていると微妙につじつまが合わなかったり、身近な家族が本人と話していてわかるようなこと(例:家族の生年月日があやふや)など、微妙だが前とはちがう何かが残っている状態。長期的に改善する可能性もありますが、何らかの影響が残ることもあります。

 一般的な脳機能障害(まひ・失語症など)よりずっと微妙な障害ですが、脳の働きに問題が生じているのは同じです。脳はスーパーコンピューターなので回路の一部が壊れてもある程度は自動的に修理できる機能がついています(脳の可塑性といいます)。しかし脳を使い続けることが神経修復を促しますから、あきらめずに使い続けることがとても重要です。脳梗塞・脳出血のリハビリで一番大事なことです。

 

4 みなさんのお役に立つアドバイスは

 

 ふだんの健康管理がたいせつ・・・脳血管障害(脳梗塞・脳出血)では、血圧の管理が大切です。血圧が高くてもそれだけでは何も起きないように思えますが、長期的には動脈硬化が進行して発症します。私のように親や兄弟がすでに脳血管障害になっているケースではリスクが高いと言えるでしょう。『何も起きないうちに血圧を管理しておく』ことがなによりもたいせつです。

 

 食生活の見直しを・・・日本式の食事だとどうしても塩分摂取が多くなりがちです。コレステロールや血糖値にも気を配りましょう。

 

 忙しさをいいわけにしない・・・今回の私の一番の反省点です。仕事が終わって帰宅し、食事を食べてぐたーとする毎日を送っていました。入院先リハスタッフに勧められて、毎日のリハビリ内容(理学・作業・言語の3種類)、三食の内容・味付け・感想、その時点で改善したところと残っている点、お通じや飲んだ薬、家に戻ってから予想されるできごと・対処法など、どんなことでも大学ノートに毎日書き続けました。ふだんあたりまえだと思っていることもあたりまえでなく、誰かの支え・気づかいがあったからやれていたことがあらためて理解できたのは大きかったです。

 

 この経験を未来に活かせ!・・・まだ医師になりたてのころに聞いた話(ジンクス)です。「だいたいの医師は年齢を重ねると、自分の専門領域の病気・ケガになる人が多い」そうです。これまで骨・関節・筋のケガはいっぱいやりましたが、今回はもう一つの専門・リハビリにどっぷり浸かってしまってジンクス通りになりました。なりたくはないが、なってしまったからにはリハビリをたっぷり味わおう!と思いました。自分が患者になったからわかることがいっぱいありました。この経験を、これからの毎日の仕事に活かしていくつもりです。

 

もどる 次へ