(アーカイブ;2005年1月号より)
ふだんあまりからだを動かしていない人が、ハイキングに出かけたり、長い距離を歩いたりすると、そのあとの2,3日、ふとももの筋肉が痛くなります。こんなときの筋肉は、かたくはっていて、押されると痛みます。同じように、なれない人が引越しの手伝いをしたり、畑を耕したりすると、肩のまわりの筋肉がパンパンにはって、さわられるだけで痛くなったりします。
でも、『肩こり』はあるのに、『ももこり』はないのはどうして?考えたらふしぎですね。
「肩の筋肉だけ、なにか特別なことがあるのかな?」
いえいえ、肩の筋肉も、太ももの筋肉も、特別ちがいはありません。
「だれでも手を使わない人はいないし、使うからつかれるんじゃないの?」
うーん、一理ありますね。でも、世の中に肩のこりやすい人とこりにくい人がいるのはどうしてなんでしょう。
「肩のこる人は、きっと苦労が多いんだよ。」
なるほど。でも、どうみたってのんびりしてて、苦労もなさそうなのに、肩がはっちゃう人もいるんですよね。
「それはあんたがわからないだけだよ。」
うーん、そういわれると困っちゃうけど、もう少し学問的なお話をしてみましょう。こりやすい理由がわかったら、対策もたてられますから。
「いいけど、肩のこりそうな話はやだよ。」
はいはい、わかりました。
いちばんよくあるのは、姿勢が悪いってことですね。
「それって、よく言われるんだけど、いい姿勢をしても、すぐにつかれちゃうし、なんだかかえって肩がこりそうな気がするんだ。」
いい姿勢っていうと、軍隊で敬礼するときのようなかっこうを思いうかべちゃう人が多いみたいですね。でも、それはまちがい。いい姿勢というのは、からだの力がぬけていて、なおかつ見た目も美しい、そんな姿勢です。
「エー?ぜんぜんわかんない。」
そうですね、柔道などの武道の構えの姿勢や、お茶やお花の先生のお師匠さんの姿勢なんかは、わりかしイイセンいってます。腰がはいった姿勢といってもいいかな。
「わかんなーい。」
…とにかく、いい姿勢とは、自然で見た目も美しい姿勢ということです。だけど、からだはふだんの生活や仕事の中で、いろんなくせがつきやすいんですね。ねこぜ気味で仕事をしている人は、仕事をしていないときでもねこぜ気味になってる人が多いんですよ。
「どうして、そうなるの?」
たくさん使う筋肉は、ちぢまって固くなりやすい、あまり使わない筋肉は、のびたり弱くなったりしやすい、そういう傾向があるんです。ねこぜの人でいうと、くびのうしろの筋肉や胸・おなかの筋肉、あるいはおしりの筋肉はちぢまっていることが多いし、くびのまえの筋肉や太もものまえの筋肉は弱くてのびちゃってることが多いんですね。
「おしりの筋肉まで関係があるわけ?」
そうなんです。だから、こういう人にとっては、いい姿勢をとろうとすると、かえってあちこちに力をいらなければならないから、かえって疲れたりするんですね。かといって、いつもの姿勢で仕事をしていると、はじめは楽かもしれないけど、姿勢が悪いぶん、ムリのかかりやすいところには疲れが集中しますから、『こり』となって出てくるんです。
「いまひとつ、すっきりしないんだけど。」
テントの柱を立てるときのことを思いうかべてみましょう。柱がぐらつかないようにするためには、両側のひもをバランスよくひいて固定する必要があります。柱がまっすぐなら、左右のひものどちらもそれほど強くひっぱらないでも固定できます。もしもななめに柱を立てようとしたら、かたほうのひもはかなり強くひっぱらなければならない一方、反対側はゆるゆるになって、とても不安定です。柱をくびの骨に、ひもをくびの筋肉におきかえてみると、ねこぜの人は、あたまが前に落ちそうになるのを、必死でくびのうしろでひっぱっているような形になるんですね。
「なるほど。」
だから、ほんとうに肩こりを治そうと思ったら、からだ全体のくせをとるようにしないと、なかなか治らないということなんですね。ほかにも肩が丸まっているくせ、肩が下に落ちているくせ、反対にいつもいかり肩でいるくせなんかもありますね。まあ、いくらいい姿勢で暮らしていても、長時間同じかっこうを続けたり、疲れがたまったり、寝不足だったり、寒いところに長くいたりすれば、だれだって肩がこるんですけど。あ、そうそう、おっぱいが大きい人もこりやすいんですよ。
「スケベ!」
いや、そういんじゃなくて・・・。