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良い姿勢のみつけかた

 

 

 姿勢がだいじだとよく言われますが、どんな姿勢がいいかにはだいぶ誤解があるようです。今回のお話です。

 

1 「良い」ってどういうこと?

 

 だれにもあてはまる良い姿勢がある。こう思い込んでいませんか。目鼻立ちがみなちがうのと同じように、体つきも千差万別です。ひょろっとした人もいれば、全体にまるい感じの人もいます。せぼねや手足の骨も形は千差万別なので、人とちがうからおかしい!ということはありません。

 

 良い姿勢とは「その人にとってもっとも無理がなく、骨や筋肉に負担がかからず、疲れにくい姿勢」のことです。だからどんなに人と違っていても、自分にとって快適で楽に動けるのならそれがあなたのベストの姿勢だといえます。

 

 友人や家族から「背中が丸くなった」とか「年寄くさい」と言われても、あなたが気持ちよく動けているのならそれでいいのです。見た目でいろいろ言われても、それは余計なお世話だと考えましょう。

 

 

 

2 「イケイケどんどん!」姿勢

 

 

 

 ところが知らず知らずのうちに余計な力が入って、姿勢が崩れることがあります。この姿勢では、世間に対して身構え、肩を怒らせ、胸を反らしあごを上げます。私は強い、負けないぞ!ゴリラの威嚇ポーズを思い出すとイメージがわくはずです。 

 

 実際には写真のようにもっと目立たないポーズですが、ストレスに負けず立ち向かおうとするとき、無意識にこういった姿勢となりがちです。土俵上での力士の姿勢が典型的です。戦う前の準備状態をあらわす姿勢ですが、全体に筋肉に力が入っていますから、長く続けると疲れやすいし、体のあちこちがこったり痛くなったりします。

 

 厳しい世の中、ときにはこういう姿勢も必要です。企業戦士の姿勢。でもずっとこれだとくたびれてしまいますよ。

 

 

 

3 「かしこまってござる」姿勢

 

 

 

 できるだけ目立たないようにしたい。だから目線を落として姿勢が合わないよう、うつむき加減になる。自己主張をせず、背景に溶け込む感じ。「イケイケどんどん」とは逆の意味で、世の中を生き抜く処世術をあらわす姿勢です。

 

 家父長制が強かった昔、女性はこういった姿勢の方が多かった気がします。いや、今でもそうかもしれません。控え目、従順、やさしい感じ。男性で言うなら、ワンマン社長にかしずく秘書のイメージです。もっと快適な姿勢に比べると、ぜんたいに小さく縮こまろうとするので、これはこれで疲れやすいのです。

 

 伝統的な日本社会で美徳とされてきた慣習にぴたりと一致する姿勢。でもこれが習慣となれば、腰痛や肩こりの原因となりますよ。

 

 

 

4 良い姿勢とは流れる水のごとし

 

 

 

 良い姿勢とは、決して固まったまま動かない姿勢のことではありません。むしろ変幻自在な身のこなしと考えたほうがいいかもしれません。

 

 姿勢は年齢で変化する・・・背骨はたくさんの骨がつながってできていますが、骨の間には軟骨(椎間板=写真の黒い部分)がはさまっています。年齢を重ねると、軟骨はどんどん厚みを減らし、背骨全体の湾曲が増して背中が丸くなっていきます。だから年を取って背中が丸くなるのは自然なことです。若い時より背中が丸くなったら、楽な姿勢=良い姿勢も丸くなっていきます。ときどき背筋を伸ばすのは構いませんが、いつでもまっすぐにしようとすると、かえって背中がつかれてしまいます。

 

 かんぺきな姿勢でも疲れる・・・一番快適な姿勢であっても、長く立ち続けたり座り続ければ、やっぱり疲れてきます。姿勢を保つために働いている筋肉にすればずっと力を入れ続けていますから、疲れないわけがありません。だから疲れないためには姿勢をときどき変えたり、動き回ったり、寝転がったりすることが必要です。

 

 姿勢のお手本は就学前の子供たち。じっとするのが苦手で、いつも動き回っています。学校に行ってじっとすることを教わる前ですから、体が感じるままに行動しています。どの子も自由に動き回っているとき、その姿勢・身のこなしは見事なものです。子供たちを見習って、大人の私たちも、もっと自由に、もっと身軽に動き回ることです。