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腰部脊柱管狭窄症の話

(アーカイブ;2006年4月号より)

 

 

 これを書いている現在、腰が痛くて、おじぎしたり、立ち上がるときに苦労しています。だけど、そんなに心配していません。いずれ良くなるし、動いていてもかまわないとわかっているので、ジョギングも続けています。安静にしなくていいのかって?いいえ、だいじょうぶですとも。

 

 クリニックの患者さんにも、たいていの場合は「動いていいです」「仕事してだいじょうぶ」って話しています。もちろん、その場で良くなるのなら一番いいのですが、なかなかそうはいきません。でも、使っていても良くなる腰痛って本当に多いんですよ。

 

 腰部脊柱管狭窄症は、腰痛・下肢痛やしびれをおこす病気です。み○もん○さんが手術を受けたことで有名になりました。手術を受けないと治らない病気なの?なんだかとてもこわそう、と思っている人はいませんか?

 

 いいえ、ぜんぜんこわい病気ではありません。

 

 手術を受けなくても、良くなる人もけっこういますよ。でも、良くなるには良くなるためのくふうが必要です。どんなくふうが必要なのかをお話したいと思います。

 

 

 

1 どんな病気なのか

 

 せぼねは、からだのおもみを一心にささえる大黒柱です。と同時に、柔軟に動くためにたくさんの骨が並んで一本の柱になっています。長い間使っていると、骨のつなぎ目がすこしづつ変形して、そばにある神経を圧迫するようになります。ところが、神経はかなりの圧迫にも耐えられるようにできているので、神経の症状がでるのにはほかの理由もかかわってきます。

 

 

 

2 なぜなるのか

 

 ほかの理由とは、けが、反復性の刺激、さまざまな病気、体調不良、からだの冷えなどをさします。神経は圧迫には強いが、血行不良にはとても弱い特徴があります。上に書いた項目は、ちょっと目にはばらばらのように見えますが、神経のそばの毛細血管のはたらきを悪くするという点で共通しています。圧迫によって神経の血行が悪くなっているところに、さらに血のめぐりが悪くなることがおきると、神経の機能に問題がおきて、痛み、しびれや筋力低下がおきるのです。

 

 

 

3 どうしたら良くなるか

 

 せぼねの変形そのものはどのような方法でも治すことはできません。手術をすると、神経を圧迫している骨のでっぱりをけずることができますから、一番いいように思えます。しかし、技術的な問題からすべてのでっぱりをけずることはむずかしいので、症状の一部が残ったりすることもありますし、麻酔をかけ、出血もするわけですから、まったく危険がないとはいえません。手術をしないで治すことができるならそのほうがいい、とは、患者さんもお医者さんも思っていることです。

 

 そこで、できるなら、くすりやリハビリで治したいというのがみんなの願いになります。

 

 くすりも、むかしに比べるといいものができました。プロスタグランジンは、神経のそばの毛細血管のはたらきを良くすることができるので、人によってはとてもよく効きます。しかし、効かない人はどうするの?というのが今の治療法で困った点です。わたしのところでは、こういう場合、漢方薬の八味地黄丸、牛車腎気丸や疎経活血湯を使います。効果がでるのに少し時間がかかりますが、けっこう喜んでもらえるようです。

 

 でも、ほんとうにだいじなのは、リハビリです。といっても、病院で電気をかけたり牽引をしたりということではなくて、良い姿勢をたもつこととか、すじをのばしてせぼねにむりのかかりにくいからだを作ること、仕事や家事の中でじょうずな身ごなしで動くことでせぼねに負担をかけないことがだいじです。そのために、ストレッチのしかたを指導したり、じょうずなからだの使い方とか姿勢についてアドバイスします。必要ならすじをのばすお手伝いをすることもありますが、基本は自分自身でやらなければいけないことばかりです。

 

 身体の冷えをとるためには、運動がだいじです。しびれが強いときには自転車や水泳をするのもいい方法ですが、歩ける人は休み休みでもいいので歩いてみてください。

 

 食べ物もだいじですね。からだを冷やすものをたくさんとるのは良くありません。いろんな考え方がありますが、お酒や甘いもののとりすぎ、アイスクリームや清涼飲料水など冷たい飲み物のとりすぎは良くありません。もちろんたばこはペケ。

 

 

 

 からだが良くなるリクツって、病気の名前がちがっても、そんなにちがいはない気がします。み○さんも、ちょっとむりしてるのかな?そうそう、私の腰痛も、だいぶ良くなったようです。